J-GLOBALについて

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ご利用者の声

研究者の発送を強力に支援 森  一顕氏

必要な科学技術情報をインターネットから、適切かつ効率的に入手できるかどうかは、研究者の生産性を大きく左右する。
(独)科学技術振興機構(以下JST)が提供する「J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)」は、 国内外のさまざまな科学技術情報の横断的な検索や分析などが無料で行えるWebサービスである。
今回は建築環境工学の専門家として、研究活動に勤しむ株式会社間組の森 一顕氏に、J-GLOBALを使った感想や得られたメリット、今後の期待などを聞いた。

インターネットで論文などを検索 同義語の問題で検索に手間取る

企業で研究開発に携わる研究者や技術者にとって、情報収集・活用やアイデア出しといった活動の重要性の高さは言うまでもない。近年、研究者・技術者の間では、情報収集の手段としてインターネットが主役となっている。

森一顕氏は大手建設会社である株式会社間組の技術研究所に所属する研究者だ。専門は建築環境工学であり、現在は、オフィスビルやマンションにおいて、建物の建設時や運用時に発生するCO2を削減する省エネルギー空調システムや換気、断熱効果の高い壁や窓などの研究開発のほか、実際の建築現場で起こる様々な課題の解決に取り組んでいる。

「各メーカーの既存の材料や機器、工法などをイニシャル・ランニングの双方から経済的実践的な視点で研究開発を進めています」(森氏)

森氏は日々の研究開発の業務の中で、論文や文献などを探し、必要な技術の関係情報を調べたり、自分が思いついたアイデアが新規のものであるかを確認したりするのに、主にインターネットを活用している。それら作業にかける時間は業務全体の約2割に達するという。

インターネットでの調査にあたり、特許情報の取得ならば特許庁や(独)工業所有権情報・研修館「特許電子図書館」など専門Webサイトが使えるものの、一般的な情報となると、通常の検索エンジンに頼らざるを得ない。

森氏は検索エンジンを利用する際、同義語の問題に何度も悩まされてきた。例えば、建築の壁などから放出される赤外線は、現在「放射」と記述するのがスタンダードだが、過去「輻射(ふくしゃ)」と記述されていた経緯もあり、現在でも研究者によって標記がまちまちとなっている。そのため、通常の検索エンジンにて「放射」で検索すると、「輻射」が使われている論文はヒットしないといった事態が生じるのである。

「目的の情報が載ったWebページにたどり着くために、考えうる類似キーワードを片っ端から入力し、試行錯誤を繰り返すしか方法はありません。ひどい場合、半日もかかってしまうこともあります。検索する側に経験とテクニックが求められるので、非常にストレスを感じていました」(森氏)

同義語でキーワード検索 情報収集の生産性を大幅の向上

そのような悩みを抱えていた森氏がインターネットによる情報検索手段として期待を寄せる新しいサービスが、JSTが提供する「J-GLOBAL」だ。

同サービスは研究者や論文、特許をはじめとする9種類の基本情報(図1)が登載され、おのおのが有機的に結びつけられており、横断的な検索や分析が可能。技術や研究者などの情報の発見、および研究テーマ選定や課題解決、新たな発想やイノベーション創出を支援する無料のWebサービスである。

自身の研究開発業務の中で実際にJ-GLOBALを利用してみた森氏は、同義語の問題をクリアした強力な検索機能を高く評価している。「入力したキーワードに対して別名(同義語)が案内されるので、研究者毎に別の用語が用いられている情報もヒットします。その上、時代によって名称が変わる用語でも、同義語としてちゃんと検索できます。欲しい情報が載ったWebページに素早く確実にアクセスできるのが大変助かりますね」(森氏)と称賛する。

森氏はあわせて、検索の精度も高く評価。一般的な検索エンジンでは、科学技術の分野と関連性が低いほかの情報まで検索結果に表示されてしまうため、目的のWebページにアクセスするために、さらに絞り込む作業が必要だ。その点、J-GLOBALなら、科学技術分野と関連性が高い検索結果のみが表示される。

「検索結果があらかじめ絞り込まれるので、必要とされる論文などがより短時間で見つけられます。私たちの生産性向上はもちろん、これから入社してくる研究者は同義語の選び方や絞り込み方など、検索テクニックの習得が不要になるのが嬉しいですね」(森氏)

J-GLOBALがそのような検索を可能とする根底には、JSTが設立以来50年間にわたり培ってきたノウハウがある。世界中の科学技術論文等約5,500万件を網羅した文献検索サービス「JDreamII」をはじめとするデータベース・コンテンツサービスを長年提供してきた実績をベースに、充実した同義語の辞書の作成、絞り込みの技術を駆使するなど、研究者や技術者が求める情報を迅速かつ的確に提供できるサービス体制を構築しているからだ。

新たな角度での調査や発想を支援 論文発表の基盤などにも期待

J-GLOBALによる情報の検索では加えて、「絞り込み検索」機能がある。例えば、ある科学技術用語をキーワードに検索すると、論文の著者や発行年および「タイトル切り出し語」などが一覧表示され、さらに検索結果を絞り込むことが出来る。「タイトル切り出し語」とは、検索された論文のタイトル内でその科学技術用語と同時に使用されたキーワードを抽出したものである。それらをたどることで、さらなる情報をより効率的に引き出せる。「今まで考えもしなかった分野や切り口で、さらに詳しく調べアイデアを発展させていくのに役立ちます」と森氏は話す。

また、外部のニュースサイトとの連携によって、キーワードに関連した報道も一緒に表示する機能も用意。森氏はその活用方法を「研究テーマがいかに世の中のニーズに合っているか、ずれていないかを確認するのに、資料を報道から情報を得たい場合、関連ニュースをすぐに入手できます」と語る。

ほかにも森氏はJ-GLOBALの検索性や網羅性を活かし、研究者が発表した論文をより多くの人に知らしめるためのプラットホームとして利用できる可能性も感じている。検索した研究者へその場でメールにて連絡できる機能などとあわせ、研究者のネットワーク拡大にも貢献できる。

現在β版で提供中のJ-GLOBALは2011年3月のβ版1.5を経て、利用者からの要望を反映したあと、2011年度中に本格版をサービスインする予定だ。森氏はJ-GLOBALに次のような期待をしている。

「自分の発想の幅がもっと広がるよう、異分野の関連情報をつなぐような機能の追加を望みます。例えば、建物の結露を防ぐ方法には、もしかしたら食品包装材など、建設とは全く異なる分野の素材が応用できるかもしれません。そういった意外な組み合わせなどを新たに発見する手助けをしてほしいですね」(森氏)

今後も建築環境工学の研究者として活動を続ける森氏。J-GLOBALは意外な発見や異分野の知を入手する機会を提供し、森氏の研究活動をこれからも力強く後押ししていく。