抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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乳牛の周産期病の中では乳熱(低カシウム血症)はよく研究され,発生メカニズムや予防法が解明されてきてはいるが,未だ発生が減少していない疾病である。筆者は,乳牛の分娩前後(移行期)のミネラル代謝を阻害する要因とその改善を通して,乳量増加と繁殖成績向上を考察する。1)加齢と共に,分娩直後は血漿カルシウムと無機リン濃度が低下し,3産以上の牛では乳熱発生の危険が高まっている。4産以上の牛では血漿遊離脂肪酸濃度が急上昇し,加齢と共にケトーシスや脂肪肝発生の危険性も高まる。2)乳熱発生は,従来カルシウム過剰摂取が問題となっていたが,むしろカリウムの過剰摂取による影響が大きいとされている。カリウムを過剰摂取すると,代謝性アルカローシスが発生し,生体内でカルシウムやマグネシウムの吸収や利用を阻害する。3)現在,飼料中のカチオン・アニオンバランス(DCAD)は,0ミリ当量程度が望ましいとされている。しかし,我が国の自給飼料中のDCADは,殆どが正の高い値になっている。4)高泌乳牛ほど,暑熱ストレスを受けやすく,消化管からカルシウムとリンの吸収が下がる影響が大きい。飼料摂取量も減るので,エネルギー不足におちいりやすい。5)マメ科植物に多く含まれる植物エストロゲンによる影響もあるとみられる。植物エストロゲンの構造は,内因性エストロゲンである17β-エストラジオールと類似しているので,生体内でエストロゲン受容体に結合する。その結果,カルシウム代謝に影響を与えることになる。以上,移行期の飼養管理はミネラル栄養全般に十分配慮することが重要である。