抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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本稿は,高度成長期の土木政策の展開について,公共事業特別会計制度を中心に検討を加えようとするものであり,具体的には1960年に設置された治水特別会計の設置過程を明らかにするとともに,その特徴・背景を指摘しようとするものである。検討の結果,第一に,治水のための特別会計制度の必要性が建設省により主張されながら,大蔵省の要求の前に実現しなかった1958年度までの段階,第二に,治水のための特別会計制度設置が急速に政治的課題としての重要性を高めるようになり,大蔵省の反対を押しのけて実現していった1959年度の段階の二つがあったことがわかった。第二の段階には,特に台風の被害が出た8月から9月にかけてより後に,急速に党のバックアップが高まっていった様子が見受けられる。時期として,次年度予算編成の準備時期にタイミング上合致しており,与党や議員として要求を政府に伝達しやすかったことが考えられる。佐藤栄作蔵相は党側の要求の前に大蔵省の立場を貫徹することができなかったが,その背景として,岸首相が安保問題に専心しており,バックアップが得られなかったことも指摘できる。(著者抄録)
