抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本研究の目的は,現在の小学校理科で行われている掘り取った植物の根を色水に浸して植物の水の通り道を調べる実験がいつから『小学校学習指導要領』及び教科書で扱われるようになったのかを明らかにし,この実験の意義について考察すること,また,根からの色水の色素の吸収について実験的に検証することである。掘り取った植物の根を色水に浸して植物の水の通り道を調べる実験は,昭和43(1968)年の『小学校学習指導要領』の改訂により,植物の体全体の水の通り道についての学習が重視され,扱われるようになっていった。この実験の意義は,児童に,根から吸い上げられた水が茎を通って植物の体のすみずみまで行きわたっていることを植物の体全体のつくりやはたらきとして,かつ視覚的にとらえることを通して学習させることであると考えられる。しかし,本研究では,傷ついていない根からは色水の色素が道管内に浸透しないことが確認された。教科書で扱われている掘り取った植物の根を色水に浸して植物の水の通り道を調べる実験では,掘り取る操作により根が損傷を受け,そこから色水が道管内に直接吸収されていると考えられる。掘り取った植物の根を色水に浸して色水が吸い上げられた場合に,色水が根から植物体内に吸収されたという記憶が児童の頭に残り,色水の色素のような大きな粒子が根から吸収されるという間違った認識をもつ可能性がある。また,小学校の教員は,教科書の実験を正しいこととして教えるのが普通ではないかと考えられるため,根からの水や養分の吸収に関する誤概念の形成がさらに助長されているかもしれない。(著者抄録)