抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本研究では,製紙スラッジ(PS)の更なる有効利用法として,PSに含まれる無機成分以外の有機物に着目し,これを原料とするメタン発酵を試みた。多数の製紙会社の協力を得て様々な種類のPSの採取を行い,畜産系消化汚泥をメタン発酵菌群として用いて,メタン発酵原料としての適性を評価した。具体的には,PSの基礎的物性(水分,灰分量,有機物量,鉱物組成,化学組成)とメタンガス発生量との関係を詳細に検討し,メタン発酵に適したPSの条件を明らかにした。得られた結論を以下に示す。1)凝集沈殿法により発生したPSがメタン発酵原料として望ましい。2)灰分量の目安は約8.2%~30%,灰分比(灰分量/有機物量)は0.2~2であることが望ましい。3)PS中のカルサイトは,1)可溶化過程(相I)で酸性化した消化液のpHの緩衝作用,2)メタン菌に必要な微量金属であるCaの供給源としての役割を担うが,3)多すぎると相Iにおける通気嫌気性菌群のpH条件(pH=4~6.5)を実現することが困難となり,バイオガス発生までに時間を要する。このため,メタン発酵に適するPSのカルサイト量には適性範囲があり,約37%~52%の鉱物組成範囲が望ましい。4)PS中の有機物1gに相当する灰分に占めるCaとMgの合計重量は,0.1~0.5gが望ましい。5)PSを構成するセルロースは,樹脂の含浸や,化学的な処理等が施されておらず,均質で,菌の生成を阻害する不純物も少ない“良質”なセルロースが望ましい。6)PSの有効利用としては,第一段階としてメタン発酵によりエネルギーを取り出し,第二段階としてその発酵残渣を利用してPSZやCPSZなどの環境浄化材料を合成する,“多段階(カスケード)型”の有効利用が望ましい。(著者抄録)