抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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2007年6月,東京都渋谷区の温泉施設で可燃性天然ガス(メタン)による爆発火災が発生し,痛ましい人身事故がおきた。これを契機に環境省は温泉の採取に伴うメタンによる災害を防ぐため,温泉法を改正し,2008年10月から施行した。当所では直ちに環境省告示(2008)の「温泉法におけるメタン濃度測定手法マニュアル」に基づき,携帯型可燃性天然ガス検出器によるメタン濃度現地試験を開始した。ここでは2009年3月までに当所を含む6分析機関で実施した道内685カ所の源泉の分析結果を基に,その検出率,検出した源泉の地域分布,泉質の特徴並びに主採取地層等について検討した。その結果,災害の防止のための措置を必要としないA試験の基準を超過した89カ所,温泉水から可燃性天然ガスを分離するためのB試験の基準に係わる試験を実施した20カ所を検出したと判定し,検出率は約16%であった。また,1カ所でも検出した源泉がある市町村は調査した市町村全体の約47%を占め,広域に分布していた。その泉質は強食塩泉を含む食塩泉系の温泉が最も多く63%,以下,単純温泉が19%,単純硫黄泉と冷鉱泉が6%,重曹泉系の温泉が5%を占めた。また,温泉水の色調,鉄含量,腐植質の分析結果等から,モール系と推定される源泉が少なくとも33%あった。さらに,SO
42-が検出されない極めて嫌気的な環境にあった源泉が51%あった。また,メタンを検出した温泉水の多くはNa/Cl濃度比やB/Clモル比などから海水の影響を強く受けていることが示唆された。一方,これらの貯留層の母岩は80%が主に堆積岩類,15%が主に火山岩もしくは火成岩類からなっていた。従って,今回検出されたメタンの多くは源泉の泉質,貯留層の母岩,嫌気的環境等から約160万年以上前の新第三紀の太古に海底や低湿地に堆積した有機物がメタン細菌等の微生物により分解されたものと推定された。(著者抄録)