抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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日本全国で1980年以降,耕作放棄が進行し,現在では埼玉県の面積に匹敵する40万haにも上る田畑が放棄されている。これには,海外からの農産物輸入の増加を背景に,農業経営の不振と後継者不足が原因となっている。耕作放棄地は,数年のうちに農地への復帰が困難な雑草によって覆われ,自然植生へ遷移することなく外来雑草やクズ,ササなどが優先した状態が長く続く。こうした耕作放棄地が増えてきた影響で,全国的に斑点米の被害が稲作害虫被害のトップとなっている。また,人間の生活空間とのバッファゾーンとして機能していた中山間農地が荒廃するにつれ,野生動物との軋轢が高まっている。政府は,1990年代以降,農地法の改正等々を通じて,企業の農業参入を可能にしたり,第三者への農地の貸付を促進したりと,農業の大規模化・効率化を目指して平野部での農地集積を進めてきた。その結果,5ha以上の農家の耕作面積が全耕作地の半分近くになり,農業法人の数も3倍以上に増えている。政府主導の下,平地の耕作地帯では農地集積が徐々に進むものと考えられるが,一方で中山間では,耕作放棄に歯止めが効かないと危惧される。経済的効率性では評価できない中山間農地の価値,農村文化の継承,環境保全など多面的機能の維持,などが一般に広く認識されることが重要であろう。(著者抄録)