抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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クラフトパルプは我が国の主要なパルプであるが,一般に歩留りは50%程度で,溶出されるリグニンを含む蒸解黒液は回収・濃縮され,エネルギー源として利用されるにとどまる。形成に時間のかかる森林資源の有効活用の観点からは,歩留りのよい機械パルプの方が優れているともいえるが,繊維表面はリグニンで覆われ,繊維間結合が弱いため強度が低いという欠点がある。本研究では,リグニンを燃焼せずに素材として活用するルートの開拓を目指し,クラフトパルプへの再複合により,既存のパルプと異なる新規繊維素材を創製することを提案する。リグニンの再複合により,パルプの歩留り改善のみならず,クラフトパルプとリグニン双方の優れた特性を発現することを期待した。リグニンはアルカリ溶液に溶けやすく,中性~酸性では析出する。この原理に基づき,クラフトパルプに,リグニンのアルカリ溶液(黒液)吸収させたのち,酸性化,洗浄することによりリグニン複合パルプを得ることに成功した。手すき紙を調製し各種試験を行い,高リグニン含有率であるにも関わらず,引張強度,引裂強度ともむしろ増加傾向で,かつ,疎水性が付与されたことが確認された。機械パルピングでも化学パルピングでも創ることが困難な「リグニンが繊維表面に少なく,細胞壁内に多く包含される」新しいパルプが形成されたことが示唆された。本手法は,クラフトパルプの歩留りの大幅向上に寄与するとともに,様々な特性のパルプの創製を可能にするものと期待される。(著者抄録)