抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
金属需要量の将来推計に関して,様々な手法が提案されてきている。そのうちの1つに,金属需要量は,経済発展とともに技術の進歩やサービス経済への移行によりピークを示すというintensity of use仮説がある。しかしながら,実際の金属需要量がその仮説通りの変遷をした例は多くない。近年,金属需要量の変遷を説明する1つの方法として,資本財を用途とする金属需要と消費財を用途とする金属需要に区別することが提案された。この手法では,資本財用途需要と消費財用途需要は異なる時期にピークを示し,前者のピークの方が後者よりも早くピークを示すとした。しかし,資本財用途と消費財用途に関する定義ならびに,金属需要量の用途を2種類に区分する手法については,検討の余地が残されている。本研究では,この資本財用途と消費財用途に区分する概念を踏襲しつつも,需要量を2種類に区分する新たな方法を提案した。世界で最も詳細な用途区分を有する金属需要統計である99用途に区分された日本における鉄鋼材需要量の1958年から2014年のデータを用い,主成分分析を実施した。第1,第2主成分は,それぞれ0.4と0.27の寄与率であった。第1主成分は,総需要量の変遷と似た傾向を示した。第2主成分は,1973年にピークを示したため,資本財用途の需要量を表していると考えた。第2主成分の主成分負荷量の大きな用途について,それら用途における鉄鋼材ストック量を推計した。それら用途の鉄鋼材ストック総量を説明変数とし,それ以外のすべての用途の需要総量を被説明変数とした単回帰分析を実施した。GDP成長が飽和するまでは,この単回帰分析により有意に説明されたため,被説明変数に計上した用途は,消費財用途の需要量と考えた。飽和した後では,消費財用途の需要総量は,GDP成長率により有意に説明された。20種の用途が,経済発展の初期に主要な需要となる資本財用途と区分できた。主成分分析は,資本財用途と消費財用途の金属需要を区分する有効な手法の1つであることがわかった。この区分に従うことにより経済発展とともに鉄鋼材需要量は,資本材用途から消費材用途へ推移してきたこともわかった。(著者抄録)