抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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有害なラフィド藻Chattonella ovata Y.Hara & Chiharaの広範囲な赤潮が,2016年夏に東瀬戸内海で初めて発生した。7月11日から17日にかけて,燧灘と備讃瀬戸における細胞密度は1mL当たり10細胞に達した。7月19日から24日にかけて,高密度分布域は播磨灘に拡大し,7月25日から31日にかけて,全ての影響を受けた海域の細胞密度は最大に達した(1mL当たり最大222細胞)。播磨灘では,本種は急速に減少したが,燧灘と備讃瀬戸のレベルは8月まで維持された。7月11日から18日にかけて,備讃瀬戸に面する高松海域では西風が優勢であったが,それ以外の期間では弱かった。これは通過流を引き起こす東向きの風と,備讃瀬戸から播磨灘にかけての細胞分布の拡大の原因であった。また,日照時間は長く(平均8.6時間),水温も高かった(約25~29°C)。さらに,塩分は,東部瀬戸内海におけるC.ovataに対して最適(約28~31)のままであったが,本種は異常発生した。これは,これらの環境条件が,強い放射照度,高水温,および高塩分に適応する本種の成長に適していることを示している。それは,強い放射照度,高い水温,および高い塩分に適応する。備讃瀬戸と燧灘では,C.ovataの分布が拡大した7月中旬にChattonella marinaとChattonella antiquaが高い細胞密度で出現した。しかし,播磨灘では,C.marinaとC.antiquaは低い細胞密度を一貫して維持した。播磨灘では,DIN(溶存無機窒素)とDIP(溶存無機リン)は,7月4日から8月15日まで,それぞれ0.51~1.17μMと0.08~0.25μMであった。C.ovataの窒素の最小細胞量はC.antiquaより低かった。これは,生長のためのC.ovataに対して競合的優位性を与えたと推定した。播磨灘では,珪藻の細胞密度は7月下旬に一時的に減少したが,8月以降の密度は1mL当たり100細胞以上を維持した。しかし,燧灘と備讃瀬戸では,珪藻の細胞密度は観察期間を通して1mL当たり100細胞以下であった。著者らは,低濃度の栄養素,弱い西風,および高密度の珪藻が,8月以降の播磨灘における低レベルのC.ovataの調節をもたらす要因であると推論した。著者らは,低い珪藻密度が,燧灘と備讃瀬戸においてC.ovataによる赤潮が長期化する原因の1つであると考えた。(翻訳著者抄録)