抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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液-液分離における透析システムには(1)圧透析,(2)電気透析(ED),(3)拡散透析(DD)があり,それぞれ圧力差,電位差,濃度差を駆動力とする。イオン交換膜(IEM)を使用したDDシステムは有害イオンの除去,酸・アルカリの回収などに応用されている。しかし,このシステムは濃度差でイオンが移動するため,EDシステムと異なり直流電力を必要としないが,イオン透過速度が低く,処理能力を高めるためには膜の必要面積が大きくなるという欠点がある。一般に平膜よりも,中空糸膜が単位体積あたりの膜面積が約10倍高くなる。このことから最近DD用中空糸型IEMの研究が行われ,ポリスルホンの基材に粉砕したイオン交換樹脂を包埋した中空糸型IEMが報告されている。しかしイオン透過性能および機械的強度が低く,実用化にはまだ問題が残る。本研究ではPVAをベースにした高分子電解質を使用することで,高イオン選択性,高イオン流束を有する中空糸型IEMを作製し,その作製条件とイオン輸送特性への関係を検討した。PVAとpoly(diallyl dimethyl ammonium chloride)及びホウ酸を含む水溶液,2-acrylamido-2-methyl-1-propanesulfonic acid及びホウ酸を含む水溶液を紡糸装置のノズルから凝固液(Na
2SO
4-NaOH混合水溶液)に押し出した後,160°Cで熱処理し,グルタルアルデヒド(GA)で化学的架橋を行うことで,それぞれ中空糸型陰イオン交換膜(HF-AEM),中空糸型陽イオン交換膜(HF-CEM)を作製した。それらを用いて中空糸膜モジュールを作製し,HF-CEMでは駆動力イオンをNa
+,モデル回収イオンをCa
2+とし,またHF-AEMでは駆動力イオンをCl
-,モデル回収イオンをNO
3-としてドナン透析を行った。作製した膜の外径,内径はそれぞれHF-CEMで1,080,910[μm],HF-AEMで1,500,1,210[μm]であった。またHF-CEMとHF-AEMのIECはそれぞれ0.28[meq/g],0.61[meq/g]となり,市販膜の1/3~1/10の値を示した。これらの膜を用いたドナン透析の結果では,いずれの中空糸膜においても,GA濃度の増加と共に駆動力イオンの透過流束は減少したが,回収イオンの流束は,GA濃度によらず一定の値を示した。その結果,駆動力イオンと回収イオンの比で定義した選択性αは,GA濃度の増加により増加した。同様の条件下で市販膜のAMXとCMX((株)アストム)を用いたドナン透析実験を行った結果,いずれの中空糸膜においてもイオン流束の値は市販膜と同等かそれ以上の値を示した。しかしαの値は市販膜よりも低い値となった。今後,荷電基含有量や架橋条件を最適化することにより,高いイオン選択性と高いイオン流束を有する中空糸型イオン交換膜の作製が期待できる。(著者抄録)