抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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モット絶縁体を母物質とする材料での超伝導発現は,銅酸化物や分子性導体(BEDT-TTFやフラーレン等の塩:BEDT-TTF=bis(ethylenedithio)tetrathiafulvalene)で知られている普遍的現象である。モット絶縁体では,電子の運動エネルギーとクローン反発が競合するという条件に加えて,格子と電子密度が整合しているという条件が必要であり,バンドフィリングがちょうど半分の時に絶縁体になる。そのためモット絶縁体を金属化する「モット転移」では,電子の運動エネルギー(バンド幅)を制御するやり方に加えて,整合性(フィリング)を制御する方法が存在する(図参照)。しかし,この二つのモット転移がどのように接続するのか,転移は一次なのか,二次なのか,超伝導が起きる付近には量子臨界点(線)が隠れているのか,といった疑問はまだ十分理解されずに残されている。κ型BEDT-TTF塩は異方的三角格子を形成する二次元モット絶縁体であり,長らく圧力によって格子を圧縮し,バンド幅制御での超伝導発現が知られてきた。これは,分子性結晶の格子が柔軟で,圧力によって容易にバンド幅を大きく変化させることができるためである。一方で,フィリングを制御するために分子性導体に化学的ドーピングを行った場合は局在の影響が大きく,非常に特殊な例(超格子を組む場合など)を除いて超伝導は観測されてこなかった。そうしたわけで,銅酸化物に見られるような,ドーピング密度を変化させた場合の相図はこれまで存在せず,物理的/化学的圧力でモット転移周辺の相図を探索する手法が活発に用いられてきた。このような状況下,我々はκ型BEDT-TTF塩にキャリアを物理的にドーピングする手法としての,電界効果ドーピングを試みてきた。電界効果トランジスタ(FET)では,ゲート電圧でドープ量を変えることが可能であり,精密なフィリング制御モット転移の観測ができる。一方で,FETに用いられるゲート絶縁膜には絶縁破壊現象による電圧の制限があり,注入可能な界面キャリアのドープ量には限界があった。今回我々は,このような限界を打ち破る手法として,光誘起双極子の作り出す大きな電界効果を利用した,新しい超伝導スイッチングデバイスを実現した。このデバイスでは,光反応によって発生する双性イオンが作り出す電気二重層を用いてκ型BEDT-TTF塩表面に強い電場を作り出すことができる。これによって低温で連続的に大量の物理的ドーピングが可能となり,これまでのゲート電圧のみによる手法よりも広範囲での物性計測が可能となった。また,光によるスイッチングは電気的な配線が要らないため,遠隔からの超伝導制御という新しい可能性にも道を拓くものでもある。この技術を使ってモット絶縁体近傍の相図を調べ,ホールドープ系と電子ドープ系の違い,あるいは相転移が一次なのか二次なのか,などの情報を調べ,物質同士,あるいは実験と理論を比較していくことができれば,将来はモット絶縁体を母物質とする超伝導の発現メカニズムに迫る重要な情報が得られるのではないかと期待される。(著者抄録)