抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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日本の地方鉄道は軽便鉄道法公布と鉄道敷設法改正を契機として発展したが,戦後早い段階から営業廃止が相次いだ。昭和40年代に国鉄でもローカル線廃止問題が顕在化し,昭和43(1968)年に赤字83線の廃止が提言され,一部の路線が廃止された。後の国鉄分割民営化では特定地方交通線が法的に規定され,当該路線は全て国鉄及びJRの経営から分離された。この時期まで地方私鉄の廃止も進み,相当部分の地方鉄道が廃止された。地方鉄道を含む鉄道は公共交通機関の一種で,公共交通機関は社会を構成する一要素であり,インフラストラクチャーとして利用者の生活を支えている。利用者のために鉄道(公共交通機関)は存在しているとはいえるが,鉄道のために利用者は存在しているとは決していえない。その一方,相当数の利用者を確保できなければ,鉄道経営のサスティナブルな安定を図ることは難しい,という現実の課題もある。平成12(2000)年の需給調整規制撤廃後,特定地方交通線転換線を含め,地方鉄道の経営移管(別組織への転換-営業廃止・バス転換を含む)は現在も進行中である。地方鉄道の経営移管は地域社会にインパクトを与えるもので,地方鉄道経営再建の事例研究は今日的課題として社会的意義を有すると考える。以上の観点において,筆者らは過年度,和歌山都市圏(和歌山電鐵貴志川線)と高松都市圏(高松琴平電鉄)での事例研究を行い,成果を得てきた。本研究では,弘前都市圏の弘南鉄道大鰐線に着目する。平成25(2013)年,弘南鉄道社長が大鰐線の廃止を表明して以降,大鰐線の存廃に関する議論と,さまざまな取り組みが行われている。筆者らの手法に基づく分析は,大鰐線の事例において,経営再建可能性を判断しうる知見を提供するものとなる。本研究では以下の分析を行う。第一に,大鰐線存廃問題の経緯についてレビューする。第二に,大鰐線沿線の人口分布について詳細に分析する。この分析においては,500mメッシュの人口データから,100mメッシュに配分する手法を用いる。第三に,沿線人口の推移という観点から,弘南鉄道弘南線とJR東日本奥羽線との比較分析を行う。また,並行するバス幹線,過年度研究の事例との比較分析も併せて行う。第四に,以上までの分析を通じて,大鰐線の経営再建が成功しうるか否か,その可能性を論じる。(著者抄録)