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J-GLOBAL ID:202102250867424984   整理番号:21A1577130

高齢者の移動ニーズに対応した旅客運送サービスに関する調査研究

著者 (4件):
資料名:
号: 156  ページ: 149P  発行年: 2021年01月 
JST資料番号: L6492A  資料種別: 逐次刊行物 (A)
記事区分: 短報  発行国: 日本 (JPN)  言語: 日本語 (JA)
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高齢化が進展する我が国において,高齢者が健康を維持していくためには,日常生活の中であらゆる機会を通して外出することが重要と考えられる。このような高齢者の生活を支える仕組みとして,行政,住民,NPO法人等による自家用有償旅客運送や許可又は登録を要しない運送に関する取組が行われている。本調査研究は,平成30年度から令和元年度の2か年調査の2年目であり,平成30年度に実施した自家用有償旅客運送及び許可又は登録を要しない運送に関するアンケート調査及びヒアリング調査により,運送サービスを提供する団体の実態,課題及び対応策を把握した。その結果,団体の別事業活動の人材及び車両の活用,団体規模と運送サービスのバランス等が事業の継続に重要であること等が分かった。その一方で,別事業の具体的内容・取組,有償運送の適切な規模および既存公共交通との役割分担,許可又は登録を要しない運送のより具体的な実態,ドライバー確保の対策等について十分把握できていないこと等が課題として残った。そのため,令和元年度における調査研究では,平成30年度におけるアンケート回答団体に対し,追加アンケート調査・ヒアリング調査を実施し,各団体が実施している輸送サービスについて,地域公共交通における役割や位置づけ,輸送サービスを継続していく上での課題等の実態について詳細な把握を行った。本調査研究の成果の概要は以下のとおりである。なお,本調査における自家用有償旅客運送の分類については,調査時点のものであり,令和2年11月の省令の改正に関する内容は含まれない。□自家用有償旅客運送。○市町村運営有償運送(交通空白)。市町村運営有償運送(交通空白)は,毎日運行されるバス路線がない地域や,バス路線があったとしても路線や停留所といったサービスが利用者ニーズに対応しきれない地域において実施されている傾向が見られた。ヒアリングを実施した地域では,市の地域公共交通網形成計画において自家用有償旅客運送が住民の移動を支える移動手段の一つであることが行政の計画として位置づけられており,行政からも助成金等が拠出されていた。また,市町村運営有償運送(交通空白)を実施している団体の約4割は,輸送サービス以外の事業・活動を行っていない団体であった。輸送サービスにおける収入構造を見ると,収入のうち行政等からの補助・委託等が占める割合が7割以上である団体が全体の70%程度あった。そのため,輸送サービスを継続していく上での課題として,ドライバーの高齢化・確保を回答した団体が多かったのに加え,行政において補助等の確保が難しくなってきていることを課題として挙げている団体が見られ,このような団体は短期(3年後程度)の輸送サービスの継続性が困難とした割合が高い傾向であった。○市町村運営有償運送(福祉)。市町村運営有償運送(福祉)は,バス路線やタクシーが利用できる地域で導入されている傾向が見られた。市町村運営有償運送(福祉)の利用者は,身体的に公共交通を利用することが難しい人を対象としているため,既存の公共交通と競合するような状況は生じていないと考えられる。また市町村運営有償運送(福祉)を実施している団体の6割以上は,介護保険法適用事業や障害者総合支援法適用事業を行っている団体であった。また,これらの事業に加え行政等から福祉関連の委託事業を受けている団体も4割程度存在していることが分かった。輸送サービスを継続する上での課題としては,ドライバーの高齢化・確保を挙げた団体が多かったが,現状の輸送サービスにおける収支が赤字であっても,輸送サービスを継続できると考えている団体が存在することが分かった。ヒアリングを行った団体では,福祉輸送においても複数人の乗合ができないかを運輸局に相談したり,ドライバーにヘルパーの資格を取得してもらい,交通空白輸送のドライバーが福祉輸送も担当できるようにするなど生産性を向上させるような取組が見られた。このような団体は現状で赤字であっても今後収支が改善することが期待できると考えられる。しかしながら,収支改善に向けて積極的な取組を行っている団体ばかりとは限らず,条件に関わらず事業が継続できると考えている団体もいるものと推測される。○公共交通空白地有償運送。公共交通空白地有償運送は,毎日運行されるバス路線がない地域やタクシーが利用しづらい(利用できない)地域で導入されている傾向が見られた。また,公共交通空白地有償運送を行っている団体のうち約4割は,行政等からの委託ではない事業に取り組んでいることが分かった。また,行政等から施設の管理・運営等の委託事業を受けている団体も見られた。輸送サービスを継続する上での課題としては,8割以上の団体がドライバーの高齢化を挙げており,ドライバーに関する課題は共通する課題となっていることが分かった。また,現状における輸送サービス収支が黒字・収支均衡であるにも関わらず,短期(3年後程度)における輸送サービスの継続性が困難とした団体があることが分かった。収支は成立しているものの,ドライバーが確保できず継続が危ぶまれる団体が一定程度いることが明らかとなった。ヒアリングを実施した団体において,近年の退職年齢の引き上げ等がドライバーの確保を難しくしているとの声が聞かれた。このような状況を踏まえると,ドライバー確保できるような仕組みを作らなければ,サービスの存続が難しくなる可能性が高いことを指摘した。○福祉有償運送。福祉有償運送は,バス路線やタクシーが利用できる地域で導入されている傾向が見られた。市町村運営有償運送(福祉)同様,利用者は身体的に公共交通を利用することが難しい人を対象としているため,既存の公共交通と競合するような状況は生じていない。福祉有償運送を実施している団体の6割以上は,介護保険法適用事業や障害者総合支援法適用事業を行っている団体であった。...(著者抄録)
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分類 (2件):
分類
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道路輸送・サービス一般  ,  経営工学一般 
引用文献 (13件):
  • 寺田一薫:バス産業の規制緩和、pp.159-160、日本評論社、2005
  • 三星昭宏:福祉的側面からみる地域の足の確保-福祉有償運送サービスのあゆみと課題、 運輸と経済、第77巻第12号、pp.57-63、2017
  • 吉田樹:地方分権と地域公共交通-自家用有償旅客運送を例として、都市問題 2019年3月号 pp.44-51、2019
  • 村上早紀子、北原啓司、土井勉:住民主体の地域交通における包括的施策の可能性と課題、第59回 土木計画学研究・発表会、CD-ROM、2019
  • 大野悠貴、加藤博和、横山光祐、大石直毅:中山間地における住民主体型移動サービスの運転者確保に関する調査研究」第60回 土木計画学研究・発表会、CD-ROM、2019
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