抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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背景。省エネによるオフィスの温熱環境の変化が,疲労や作業効率に影響を及ぼすことが分かりつつあり,適切な温熱環境の調整が,疲労軽減や作業効率の向上といった執務者の便益向上に寄与すると考えられる。そこで,適切な温熱環境の調整に資するオフィスの便益評価手法の確立に向け,当所は,中温~高温側環境を対象に被験者実験を実施し,認知機能を測定することで,温熱環境が疲労時の作業効率に及ぼす影響を評価できる可能性を報告した。一方,冷房による冷えが不快感につながるとの報告もあり,低温側環境を含む作業効率の関係の分析も必要である。目的。異なる温度環境が疲労時の作業効率に及ぼす影響を評価する被験者実験を行い,各認知機能の温度影響の有無と,温度と生理心理量,作業効率の関係を明らかにする。主な成果。疲労状態の47名の青年男性を,低温22°C,中低温25°C,中温28°C,高温32°Cの4つの温度条件注5)に曝露し,生理心理量および作業効率を決定する主要因である認知機能を測定する被験者実験を実施した。実験では,オフィス業務に必要と考えられる4つの認知機能(「課題への適応能力(遂行機能/作業記憶機能)」,「記憶能力」,「誤った動作の抑制」,「長時間の集中力」)に着目し,課題内容をPC操作で回答させる方法をとることで,オフィス業務実態を模擬した。この結果,以下の成果を得た。1.各認知機能の温度影響の有無。「誤った動作の抑制」と「記憶能力」に温度の影響は見られなかったが,「長時間の集中力」は,作業前半において高温ほど正答率が低い傾向にあった。一方,「課題への適応能力(遂行機能)」は,中温28°Cの正答時反応速度が有意に速くなり,作業効率が高くなった。2.温度と生理心理量および作業効率の関係。低温側条件は皮膚温の低下が見られたが,中温28°C条件は,平均皮膚温や温冷感申告が温熱中性範囲に含まれ,上記(1)の遂行機能で高い作業効率を示した。また心拍数やストレス評価指標の唾液アミラーゼ活性値が,実験後に有意に低下した。このことから,中温28°C時の生理心理量が,遂行機能の作業効率を上げたと考えられる。以上より,認知機能の種類に応じた,疲労時の作業効率の向上に寄与する適切な温度範囲を検討できる可能性が示唆された。(著者抄録)