抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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筆者らは今まで,地方鉄道に関する事例研究を積み重ねてきた。昨年度の研究では,地方鉄道研究の全体枠組構築を提案するとともに,統計指標推移に関する考察を行った。具体的には,個別の鉄道(又はカテゴリー)毎に,輸送人キロ,営業キロ数,旅客収入データを時系列的に収集・分析した。これにより導かれる指標は輸送密度と客単価で,両者間には強い負の相関関係が認められた。本年度は,昨年から更に深度化した分析を行った。本研究で得られた成果は以下の五点である。第一に,新しい分析手法は客単価と輸送密度の図化において,時系列推移と散布図を併用する単純なもので,客単価と輸送密度の関係をより明瞭に可視化する,地方鉄道の現状理解に有用かつ有益な分析手法である。第二に,本研究で示した新しい分析手法に用いるバックデータは,基本的に国土交通省編纂の鉄道統計年報に記載されている三指標のみという簡便さである。同年報は国により編纂された信頼性の高い統計書で,平成24(2012)年度版以降はWeb上で公表公開されるオープンデータの一種である。すなわち誰でもアクセス可能な統計書で,当事者のみならず外部第三者による分析可能という重要な特長を有する。第三に,特に地方鉄道において,客単価と輸送密度との間に高水準の負の相関関係が認められる(少なくともその時期がある)事実を示した。この負の相関とは,輸送密度減少の原因は第一義的には客単価上昇に求められることを明示する。これは今まで誰も主張していない新事実で,筆者らが得た知見のうち最重要の一つである。第四に,新分析手法活用により,利用者の動向がある程度細かく見える,すなわちマクロ的統計指標からミクロ的利用者動向が垣間見える断面がある,との知見といえよう。第五に,新分析手法は専ら地方鉄道研究を念頭に置いたものであるが,JR各社や大手私鉄に対しても適用可能である。(著者抄録)