抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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現在の製塩プロセスはイオン交換膜法製塩に代表されるように,比較的大規模な装置から構成される。低炭素社会実現に向けてこれらのプロセスもできるだけ小型化かつ少ない動力で運転させる必要がある。そこで本研究では,ミリスケールの液滴を利用した製塩プロセスの開発を目指した。液滴自身の沸点よりも十分高温に熱した表面に液滴を滴下させると,液滴と表面の間に液滴自身の蒸気膜が形成され,膜沸騰状態となり,いわゆるライデンフロスト効果が観測される。このライデンフロスト液滴内では混合・物質移動が促進される。さらに,表面をラチェット状にすると液滴は一定方向に自進運動をする。これらの特徴を利用し,塩化ナトリウム水溶液液滴を高温ラチェット状面に連続滴下することで,コンパクトな連続製塩プロセスが開発できると考えた。そこで本研究では基礎検討として,高温面上の塩化ナトリウム水溶液液滴ダイナミクスおよび,蒸留水液滴をモデルとしたラチェット状面における自走運動のダイナミクスを実験的に検討した。実験ではシリンジポンプから液滴を生成させ,高温面上に滴下させ,その運動を高速度カメラおよびビデオカメラを用いて観察した。塩化ナトリウム水溶液液滴を高温面上に滴下すると,いずれの温度帯においても安定したライデンフロスト現象が見られず,液滴が振動あるいは跳ね上がる現象が継続的に観測された。蒸留水液滴や他の水溶液系(キサンタンガムやポリアクリル酸ナトリウム)ではこれらの現象は見られず,溶媒蒸発の際には必ず見られる現象ではないといえる。溶質の分子量や水との親和性が影響していると考えられるが,詳細は今後の課題である。また,ラチェット状高温面において,蒸留水液滴は250°C以上で安定した自走運動を示した。この自走速度はラチェット状の深さや温度に影響し,さらには高分子を添加した際はその濃度の影響も受けることがわかった。特に,ラチェット深さや温度によって速度が制御できることから,連続式製塩プロセスを設計する際の蒸発に要する時間スケールに対応するような基板設計や操作条件を検討する必要があるといえる。今後,塩化ナトリウム水溶液液滴においても自走現象を検討する。また,安定したライデンフロスト現象を起こすための材質や滴下条件を詳細に胆する必要はあるが,液滴を利用することでコンパクトな製塩プロセスが創出できると考えられる。(著者抄録)