抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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気候変動に対して脆弱な農業分野においては,様々な適応策が提案されている.有効な適応策でも,気候変動下で生じ得る制約や社会に内在する要因(行政,制度,政策など)が潜在的な障壁となってその実施が難しくなる場合がある.このような状況をIPCC第6次評価報告書では「ソフトな適応限界」と呼んでいる.Takada et al.(2024)は水稲生産の高温障害に対するソフトな適応限界を予測する枠組みを構築した.その枠組みでは,気候変動シナリオを入力値として水稲生育モデルと分布型水循環モデルによる解析を行い,高温障害による水稲の品質低下を移植日の変更により回避する行動(以下,適応策)と河川の渇水流量の関係に基づき,適応策への制限要因を低水管理の観点から評価した.この枠組みを信濃川流域に適用した結果,水稲の移植日変更という適応策は2030年までにソフトな適応限界に直面する可能性を示した.本稿では,Takada et al.(2024)の枠組みの詳細を紹介するとともに,その評価対象を利水基準点から下流域全体に拡張し,下流の河川流況の悪化がソフトな適応限界に繋がる可能性について検討した.(著者抄録)