抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
現在の多量の化石燃料の使用は,エネルギー資源の枯渇を招くのみならず,地球温暖化等の全人類に共通の環境問題を引き起こしている。化石燃料に代わるエネルギー源の一つとしてバイオマスがある。バイオマスの一つである有機性廃棄物を嫌気性発酵することで,水素ガスやメタンガスといったエネルギー源を生産できる。しかしながら,嫌気性発酵(メタン発酵)プロセスに関して,近年,処理水中にメタンが残存することによるエネルギー回収効率の低下が指摘されている。さらに,処理水中にメタンが残存することは,温室効果ガスであるメタンが排出された処理水から大気中に放散すること,発酵液の液肥利用時に施肥された農地からメタンが大気中に放散することを意味する。そこで本研究では,高濃度有機性排水のメタン発酵処理から発生する処理水中に残存するメタンガスを回収することを試みた。ガス回収には脱気膜を用いた。脱気膜はさまざまな液体中に存在する多種多様な溶存ガスを除去するために用いられている,液体は通さず溶存ガスのみを透過する能力をもつ中空糸膜である。メタン発酵リアクター内に浸漬した脱気膜内を負圧にすることにより,リアクター内の溶存メタンを回収できた。しかしながら,溶存メタン濃度の低下に伴い,リアクター内のヘッドスペースに存在するメタンが発酵液中に再溶解してしまい,総メタン回収量を増大することはできなかった。脱気膜を適用する副次的な効果として,処理水中の溶解性COD成分,とくに有機酸濃度が著しく低下し,処理効率が向上した。有機酸除去速度増大の要因の一つとして,脱気により発酵液中の水素ガス濃度が低下し,有機酸分解反応が熱力学的に有利になったことが考えられた。本研究で用いた脱気膜は,分子量の小さいガスを選択的に透過させる性質をもっていることが明らかとなった。(著者抄録)