抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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高レベル放射性廃棄物の地層処分サイトの性能評価にあたっては,天然バリアを構成する岩盤中における水理・物質移行特性を適切に評価することが重要である。従来の研究では,堆積岩における物質移行現象に関しては,粒子間間隙を主な移行経路として考えてきた。しかし,亀裂が発達した堆積岩においては,亀裂が粒子間間隙よりも卓越した水みちを形成する可能性がある。本研究では,亀裂が発達した堆積岩中の物質移行現象を把握することを目的に,亀裂を有する堆積岩の水理・物質移行データを室内試験を実施して拡充するとともに,それらのデータに基づいた亀裂を有する堆積岩中の物質移行の評価手法の検討として,亀裂内の地下水流速の違いが堆積岩の物質移行現象に与える影響について数値解析的な検討を行った。また,堆積岩が分布する広域的なスケールでの地下水流動場を評価する手法開発の一環として,幌延地域の地下深部において確認されている高い間隙水圧について,その形成要因を把握することを目的とした数値解析的検討を行った。室内試験では,原子力機構が北海道幌延町において実施している幌延深地層研究計画に伴う立抗の掘削でGL.-30.6m地点において取得された岩塊試料(声問層)を整形し,人工の平行平板亀裂を有する試料を作成して,これを対象とした透水試験ならびに非収着性トレーサー試験を実施した。試験により得られた実効拡散係数は既往の声問層を対象とした試験結果の平均的な値であり,分散長も移行距離の1/10倍という従来から指摘されている関係と同様の傾向が示された。堆積岩の物質移行現象に与える影響について数値解析的な検討では,単一亀裂モデルを用いて,動水勾配の異なる数ケースについて物質移行解析を実施し,マトリクス部への拡散が顕著となるような岩盤では亀裂内流速の変化が亀裂内でのトレーサーの滞留時間に影響を与え,その結果マトリクス部への拡散現象による移行量に顕著に影響を与えることがわかった。幌延地域を対象とした地下水流動の数値解析的検討の結果,幌延地域の地下深部において確認されている高い間隙水圧については,透水係数などを平均的に表現した広域的なモデルでは再現できずに局所的な要因によるものと推察された。また,解析の結果から広域的なモデルでの岩盤への涵養量として16mm/年程度の値が示された。(著者抄録)
