抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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新潟県村上市神林地区では,洪水常襲地区の上流域に広がる水田に「落水量調整板」を設置し,大雨時に水田に意図的に雨水を貯留することで,洪水の緩和を図るという「田んぼダム」の取り組みが行われている。本研究では,この「田んぼダム」の洪水緩和機能を流域スケールで検証した。流出解析を行うにあたり,河川・排水路,山地・集落(市街地),水円の3っのモジュール(構成要素)で流域をモデル化した。山地・集落(市街地)モジュールは,Kinematic Waveモデル,水田は水田水収支シミュレーションにより流出量を経時的に計算し,これらを河川・排水路モジュールに横流入量として入力し,不定流解析によって計算を行った。対象とした降雨イベント(日降糧101.8mm,最大時間降水量20.8mm)の場合,調整板を全水田に設置することにより,排水河川である笛吹川および幹線排水路のピーク時流量が25%~29%減少し,0.17~0.23mの水位低下をもたらすという結果を得た。また,通常,同程度の日降水量では一部の市街地排水路に溢水が見られるのに対し,計算結果どおりに,実際に現況の調整板設置率(80%)でも溢水は確認されなかった。これらのことから,「田んぼダム」の取り組みは,対象地域の洪水緩和に有効であるということが明らかになった。(著者抄録)