抄録/ポイント:
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人間活動に起因する,化石燃料からのCO
2の大気中への放出は,近年の全球的気候変化の主要な原因であると考えられている。海洋は,人為起源CO
2放出量の20~35%を隔離しており,気候システムに対するこの擾乱の影響を緩和するうえで重要な役割を果たしている。このシンクの解明と定量化には近年大きな進歩がみられるものの,人為起源CO
2の海洋における分布,工業時代における海洋の吸収速度,人為起源CO
2の隔離における海洋と陸上生物圏の相対的な役割については,かなりの不確定性が残っている。本論文では,工業時代の海洋での人為起源CO
2の空間的に分解された時間に依存する履歴を,観測に基づいて再構築した結果を示すことで,これらの問題に取り組んだ。用いた手法は,海洋でのトレーサー輸送がグリーン関数によって記述できるという考えに基づいており,最大エントロピーデコンボリューション法を用いてトレーサーのデータから推定を行っている。その結果,海洋による人為起源CO
2の吸収は,1950年代以降に急速に増加しており,最近の数十年間は増加速度が少し低下していることが示された。2008年の人為起源CO
2の貯蓄量は140±25Pg Cであり,吸収速度は2.3±0.6Pg C yr
-1であると見積もられる。さらに,このCO
2が海洋へ流入する主たる経路は,南半球の海洋にあることがわかった(2008年における人為起源CO
2の海洋貯蓄量の40%以上に寄与している)。これらの結果は,陸上生物圏は1940年代までCO
2のソースであったが,その後シンクに変化したことも示唆している。工業時代全体について,不確定要因を考慮すると,陸上生物圏はCO
2に対する中立的あるいは正味のソースであり,同じ時期にわたって海洋により吸収された量の約半分に達するCO
2に寄与していたと見積もられる。Copyright Nature Publishing Group 2009