抄録/ポイント:
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in vivoでのさまざまな電子伝達反応の間に産生される活性酸素種(ROS)は,一般的に細胞に対して有害であると考えられている。哺乳類の造血系では,造血幹細胞のROS濃度は低い。しかし意外にも,骨髄系共通前駆細胞(CMP)では,ROS濃度が大幅に上昇している。この2種類の前駆細胞でみられるROS濃度の違いの機能的重要性は,まだ明らかにされていない。本研究では,哺乳類の骨髄系前駆細胞と非常に近いショウジョウバエ(Drosophila)多能性造血系前駆細胞では,in vivoの生理的条件下でROS濃度の上昇がみられ,これが分化に伴って低下することを示す。遺伝学的手法によってin vivoでこのような造血系前駆細胞からROSを除去すると,成熟血液細胞への分化が遅れる。逆に,造血系前駆細胞のROS濃度を基礎レベルを超えて上昇させると,JNKやFoxOの活性化とPolycomb機能の抑制を伴うシグナル伝達経路を介して,ショウジョウバエでみられる3種類の成熟血球すべてへの異常に早い分化が引き起こされる。前駆細胞集団での発生的に調節された中程度の濃度のROSは,前駆細胞を刺激して分化しやすい状態にし,造血系細胞運命の調節に対するシグナル伝達因子としてのROSの役割を確立すると考えられる。我々の結果から考えられるモデルは,哺乳類の造血系発生でのCMPの分化と酸化ストレス応答にROSが担うと思われるシグナル伝達因子としての役割を示すものへと拡大可能だろう。Copyright Nature Publishing Group 2009