抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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1972年当時,アホウドリDiomedea albatrusの伊豆諸島鳥島で唯一の繁殖地だった燕崎は,切り立った断崖に囲まれた植生の貧困な火山砂の堆積した狭い急斜面で,大雨による土砂の流入・流出などによる埋没と侵食が毎年起きる不安定な立地条件にあり,巣が形成される表土の保全対策が急務だった。このような繁殖阻害状況の改善のための環境庁の実施した調査の結果,生息数を増加させるために,繁殖地斜面の地盤保全と島内新繁殖地の形成の二つの手法が提案された。1991年に燕崎で実施した技術手法調査結果を受けて,1992年から鳥島北西のなだらかで植生の豊かな初寝崎斜面でデコイと音声を用いたアホウドリの誘致による,新繁殖地形成の取り組みを毎年継続し,1995年には1つがいの若鳥の新繁殖地での繁殖に成功し,2008年繁殖期までには初寝崎コロニーには48つがいの産卵が認められた。本報告で,初寝崎新繁殖地での繁殖つがい数の増加とつがい関係,営巣場所の固執性を調べた。前年の繁殖シーズンの推定つがい数に対する翌年の繁殖つがい数は,2005年からの3年間で64.9%,87.5%,76.2%となり,推定つがい数の76.2%(3年間の平均値)が繁殖した。つがい関係と営巣場所については,1995年に最初に繁殖した1つがいは,その後も同じつがい相手と連続して2008年まで全く同じ場所で巣をつくり産卵したのが観察された。アホウドリはつがい相手の永続性と巣位置への強い固執性を有することが示唆された。