抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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エディアカラ紀は,地球の歴史に記録された最も厳しい気候変動の1つである,6億3,500万年前のマリノアン氷河期の「スノーボール」状態からの復帰から始まるとされている。マリノアン氷河期の間の海洋での堆積は,古緯度の赤道付近で起こり,薄い炭酸塩層でくっきりと覆われている。この炭酸塩層は海洋における炭素と硫黄の同位体比変動を保存しており,その値はそれぞれ約-5‰と約+15‰である。これらの堆積物は,氷河期以後の海面上昇の際に起こった広範囲にわたる海洋炭酸塩沈殿を記録していると考えられている。堆積物におけるこの急激な遷移は,気候システムが大きな不平衡状態にあったことを記録しており,顕生代の退氷を調節した平衡のとれたフィードバックが与える周期的な層理シグナルとは著しく異なっている。退氷が急激に起こったことの理由を説明する仮説には,氷アルベドによるフィードバック,後氷期の海洋の鉛直循環による深海からの気体の放出,メタンハイドレートの不安定化が挙げられている。本論文では,海洋堆積物でこれまでに測定された中でも最も幅広い酸素同位体比値の変動(-25‰から+12‰まで)が,キャップカーボネートの下にあるマリノアン氷河期の退氷時の堆積物中のメタン湧出域で測定されたことを報告する。この値の広がりは,氷河の融解水によるクラスレート域の急な流出と不安定化の際に,氷床由来の降水とクラスレート由来の流体とが混合した結果である可能性が高い。古緯度の赤道付近という位置から,現在よりも1桁大きかった大陸棚の永久凍土プールは非常に不安定だったと考えられる。この大きさのプールは,退氷を引き起こし,また後氷期における全球的海洋の炭素および硫黄同位体比変動,急激で定向的な温暖化,キャップカーボネートの堆積,そして海洋の酸素危機を説明できるような,大規模な生物地球化学的フィードバックをもたらした可能性が高い。今回の発見は,低緯度域の永久凍土内のクラスレートから放出されたメタンが,退氷と温暖化のきっかけとなり,また強い正のフィードバックとして働いたことを示唆している。...Copyright Nature Publishing Group 2008