抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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鉄ニクタイド系化合物における超伝導では,その超伝導転移温度Tcが最大55Kであり,銅酸化物に次ぐ,高温超電導体である。この鉄ニクタイド系化合物では,銅酸化物との類似点も見られるが,本質的に多軌道系である等のように異なる点も多い。この為,従来型超伝導理論を適用できない非従来型超伝導の可能性がある。このような物質の物性を理解するには,物質のバンド構造の理解が必要である。そこで,実験から得られた結晶構造を元に第一原理バンド計算を実施し,このバンド構造を精確に再現するタイト・バイディング模型を構築し,更に,この模型に電子間相互作用を加えた多体ハミルトニアンを考え,乱雑位相近似によってスピン感受率を計算した。そして,算出されたスピン感受率から,波数(π,0)と(0,π)の近くにおいて,スピン揺らぎが発生することが示された。このスピン揺らぎは,非連続なフェルミ面のネスティングで発生するものである。このネスティングによって,非連続なフェルミ面間で符号を反転させるs対称性を有する超伝導「符号反転型s波超伝導」の可能性が示唆された。更に,ネスティングによるペアリング対称性を検証する実験として,核磁気共鳴,中性子散乱実験などの実験との整合性について検討した。最後に,圧力が超伝導に齎す効果について調査し,超伝導状態を変化させるニクトゲンの位置を,圧力によって制御できることが示された。