抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
最終間氷期(海洋同位体年代5e)には海水準が4~6m高かったことを示す証拠は広くみられており,地球温暖化によって現在の氷床の状態が悪化し西暦2100年までに同程度の海面上昇が起こることが懸念されている。この予想上昇速度は,氷床融解のシミュレーションに基づいており,より急速な氷減少が発見されたことはモデルにあまり反映されていない。最終間氷期に海水準が上昇した際の速度を知ることは,そのような急速な氷減少過程が将来の壊滅的な海面上昇につながる可能性を評価するのに重要である。高海水準期の海面に関する最もよい直接記録は,安定した地域にある年代がはっきりしたサンゴ礁化石から得られる。しかし,こうした記録には,潮間帯に広範に存在する指標から+6mと推測される高い海水準に上昇し切るまでの礁嶺の発達状況が欠けており,千年よりも短い時間スケールでウラニウム系列の年代を再現することが困難なため,詳細な年代順配列もない。本論文では,メキシコのユカタン半島の安定した北東部地域で得られた,最終間氷期の高海水準期の礁嶺の完全なシーケンスと,そのウラニウム系列年代とを提示する。高海水準期のサンゴ礁の発達は+3mでの礁嶺の消滅で中断され,+6mまで後退したことがわかった。礁嶺下部は突然消滅するが,礁湖下部と礁嶺上部とが連続的に拡大していることから,この後退が生態学的な時間スケールで生じ,海面が急激に2~3m上昇したことが引き金となったと推測される。我々は,礁嶺上部から得られた極めて信頼性の高い
230Th年代と,ほかの安定な地域から得られたサンゴ礁年代の改善された層序学的ふるいわけを用いて,この急激な上昇が生じた時期を約121kyr前に絞り込んだ。これは,最終間氷期の終末期に氷床が不安定になった時期があったことを裏付けていると結論する。Copyright Nature Publishing Group 2009