抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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孤立した多体量子系の時間発展は,長い間解明されないままである。最近,この問題にとって重要な実験研究が可能になり,理論的な関心が高まっている。一般的な孤立系では,非平衡動力学から熱化が予測されている。この緩和過程によって,系は巨視的な量の値が定常値をもつようになり,この値は大きく異なった初期条件に対しても同じで,統計力学を使って予測可能である。しかし,動力学カオスによって古典的な熱化が可能になるのと,ある意味で同じように量子熱化を可能にするのが,どのような多体量子力学の性質なのかは明らかでない。例えば,動力学的カオス自体は,その時間発展が線形でスペクトルが離散的な孤立した量子系では起こらない。最近のいくつかの研究では,このような系の緩和の結果について,統計力学では誤った予測が生じる可能性も示されている。本論文では,一般的な孤立した量子多体系が,実際に,標準的な統計力学による予測でうまく記述される状態へと緩和することを実証する。さらに,時間発展自体は緩和において単に補助的な役割しか果たさず,その代わり,熱化がDeutschとSrednickiが初めて提案したように,各固有状態のレベルで起こることを示す。我々の系で確認された,この固有状態の熱化シナリオの特筆すべき結果は,熱平均の計算には単一の多体固有状態の知識で十分であり,小正準エネルギーウィンドウにある固有状態からはすべて同じ結果が得られるため,どの固有状態でもよいことを示している。Copyright Nature Publishing Group 2008