抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
南九州畑作地帯は,大部分が透水性の高いシラス台地上に立地し,温暖・多雨な気象条件を活かしたサツマイモ,飼料作物,露地野菜を基幹とする畑作農業および畜産業が盛んであり,畑作物への肥料および家畜排泄物の施与に起因して,窒素負荷の増大に伴う周辺水環境の悪化が懸念される。窒素負荷問題の解決に向けて,南九州畑作地帯を代表する笠野原シラス台地を対象に窒素の動態解析を行い,その実態を把握し,窒素溶脱軽減対策を提唱した。笠野原台地は,4,800haに黒ボク土畑が広がる。1970年代以降畜産基地化が進行し,現在,畑作農業に由来する年間窒素負荷量は3,500Mgと見積られ,約10%が肥料に,残り約90%が家畜排泄物に由来する。窒素負荷の継続に起因して,台地周縁の地下水は硝酸性窒素汚染が進行し,特に西部の湧水では,地下水に係る環境基準値10mg L
-1を超える濃度に達していた。西部湧水の窒素汚染は,台地北西部の畑作農業由来の窒素負荷を主とし,加えて,豚ぷん尿のす掘り貯留池からの点源負荷的汚染が特定された。北西部の窒素面源負荷の影響は中南部の中山谷の湧水にまで及んでいた。中山谷周辺に分布する水田の脱窒能は高く,畑-水田連鎖は,畑地から湧出する硝酸性窒素の浄化対策として有効な手段と判断された。畑作農業における窒素溶脱の軽減には,作物の吸収量に見合った施肥技術の確立が重要であり,土壌残存窒素を累積させない施肥法および家畜ふん堆肥の利用技術の開発が求められる。家畜ふん堆肥の有機質肥料としての利用促進に向け,家畜ふんペレット堆肥の肥料窒素代替率を牛ふん30~40%,豚ぷん50~60%,鶏ふん60~70%と評価し,各種作物の養分吸収特性に応じたブレンド施用法,化学肥料との併用法を明らかにした。さらに,家畜ふん堆肥の連用では,土壌残存窒素の累積を回避する作付け体系の選択と化学肥料との組合せが効果的であることを明らかにした。以上,南九州シラス台地畑地帯では,水環境保全のために,家畜排泄物由来の窒素負荷を削減する必要があることを明らかにし,そのための堆肥化処理と高品質堆肥の製造による広域流通の促進,有機質肥料としての有効利用法を提唱した。(著者抄録)