研課題
J-GLOBAL ID:200904091626689900  研究課題コード:9911004414 更新日:2001年03月30日

細胞周期と新規調節キナーゼ 細胞周期におけるデスミン及びビメンチンのリン酸化・脱リン酸化

Cell cycle and a novel regulatory kinase
実施期間:1998 - 1999
実施機関 (1件):
実施研究者(所属機関) (8件):
研究概要:
以前我々は,Rho-キナーゼがグリア線維酸性蛋白質(GFAP)を細胞質分裂期に分裂溝特異的にリン酸化し,グリア線維の娘細胞への効率的な分配に重要な役割を担うことを報告した。また,ビメンチンも分裂溝特異的にリン酸化されることを示した。そこで,GFAP,ビメンチンと同じタイプIIIに属する中間径フィラメント蛋白質(IF)であるデスミンにおけるRho-キナーゼの制御機構を検討した。in vitroにおいて,Rho-キナーゼは活性型であるGTP結合型Rho依存的にデスミンをリン酸化し,そのリン酸化はフィラメント形成の阻害を引き起こした。さらに,デスミンの16番目,75番目及び76番目のスレオニン残基(Thr-16,Thr-75及びThr-76)がRho-キナーゼによってリン酸化されることを見出した。これらの部位に対する抗リン酸化ペプチド抗体を新たに作成しヒト骨肉腫細胞を染色すると,細胞質分裂時もデスミンは細胞質全体に分布するにも関わらず,Thr-16,Thr-75及びThr-76はすべて分裂溝領域のデスミンを特異的にリン酸化されることが判明した。このことはRho-キナーゼがすべてのタイプIIIのIFの分裂溝キナーゼとして働き,細胞質分裂における娘細胞への効率的なIFの分配に重要な役割を担うことを強く示唆した。Rho-キナーゼは分裂期に限らずアクチン系細胞骨格の制御に重要な役割を担っていることが示されているが,中間径フィラメント(IF)に関しては,細胞質分裂期以外の制御機構についてほとんどわかっていない。そこで,間期細胞におけるRho-キナーゼのデスミン及びビメンチンの制御機構について検討を加えた。タイプ1(PP1)・2A(PP2A)脱リン酸化酵素阻害剤であるcalyculin A(CA)を細胞に処理すると,間期細胞においてThr-16,Thr-75及びThr-76のリン酸化の出現が認められた。ビメンチンも同様にRho-キナーゼの特異的リン酸化部位(Ser-71)のリン酸化の出現が認められた。一方,ビメンチンにおけるC-キナーゼの特異的リン酸化部位(Ser-33),cdc2キナーゼの特異的リン酸化部位(Ser-55)及びCaMキナーゼIIIの特異的リン酸化部位(Ser-82)についても同様の検討を行ったが,CA処理によりこれらの部位のリン酸化の明らかな誘起・増強は認められなかった。一方,同じPP1・PP2A阻害剤であるオカダ酸(OA)を用いて検討したところ,ビメンチンSer-71のリン酸化が出現するのに100倍以上の高濃度を必要とした。OAおよびCAはPP2Aに対し同程度の阻害効果を有するが,PP1に対してOAはCAに比べ50-100倍阻変効果が低いことが明らかになっていることから,正常間期細胞におけるRho-キナーゼによるリン酸化デスミン及びビメンチンの脱リン酸化を担っている脱リン酸化酵素は,PP1であると考えられた。また,CA処理によるビメンチンSer-71のリン酸化は,Rho-キナーゼ阻害剤およびRho-キナーゼのdominant-activeの導入により消失した。以上のことから,Rho-キナーゼは細胞分裂期だけでなく間期細胞においてもIF蛋白質をリン酸化するが,正常間期細胞ではRho-キナーゼによるIFのリン酸化は,PP1によりたえず脱リン酸化されており,Rho-キナーゼとPP1の活性のバランスは厳密に調節されている可能性が考えられた。
研究制度: 経常研究

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