抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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酸化チタンは,光触媒として理想的な特長を持つが,紫外光しか吸収しないことが短所である。そのため,屋外の太陽光や室内の蛍光灯に含まれるほんのわずかな紫外光だけでなく,可視光の一部をも利用しようとする試みは当然といえる。光触媒では,伝導帯,価電子帯およびバンドギャップからなる半導体のバンド構造を考え,光吸収によって生じた伝導帯の電子と価電子帯の正孔が,光触媒表面に吸着された化学物質をそれぞれ還元,酸化すると考える。従って,光触媒を可視光応答型にするためには,バンドギャップを小さくする必要があり,伝導帯を下げるか,価電子帯を上げるか,あるいはそれらの両方である。しかし,酸化チタンのような単純金属酸化物の価電子帯-伝導帯間の励起を可視光で誘起することは困難である。本稿では,このことを認識したうえで,紫外光応答型光触媒を可視光応答型へと転換するために,1)ドーピングや複合金属酸化物の利用などのバンド構造の制御,2)白金担持型酸化タングステンにおいて見られるような多電子移動反応の利用,3)高分散金属酸化物やイオンを含む光吸収の利用という3種類の戦略があることを示した。1)では,ドープした異種原子や複数の金属イオン量の量論比からのズレなどによって,電子-正孔の再結合を促進すると考えられる結晶欠陥量が増大することを防止すること,2)では,多電子還元触媒として白金などの貴金属以外のものを開発すること,3)では,凝集を抑えて高分散状態を保ったままで,光吸収量を増大させることが当面の課題である。しかし,材料や構造の制限は少ないため,さまざまな材料について調製法や表面処理法を駆使することによって,酸化チタンと同様の長所を備えつつ,可視光応答性を示す光触媒が開発されると期待できる。