抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
タンパク質合成の終了時には,細菌の終結因子RF1とRF2がメッセンジャーRNAの終止コドンを特異的に認識してリボソームに結合し,これが引き金となって,合成中のポリペプチド鎖とペプチジルtRNA部位にあるトランスファーRNAの間の結合が加水分解され,新生タンパク質が遊離する。終結因子が高い特異性を示すのは終止コドンの最初の位置にあるUに対してであり,2番目,3番目については異なるプリンの組み合わせを認識する。すなわち,RF1はUAAとUAGを,RF2はUAAとUGAを読み取る。翻訳終結複合体の結晶構造が最近決定され,終止コドン読み取りのエネルギー論的性質を計算解析して,終結因子の結合の高い精度が何に由来するのかを解明できるようになった。今回我々は,種々の同族,非同族終結複合体について,分子動力学的自由エネルギー計算を行う。シミュレーションにより,コドンの3か所すべてについて,解読の基本原理が定量的に説明され,終結因子の特異性をもたらす重要な要素が明らかになった。総合的な読み取り機構には,これまで知られていなかった相互作用と認識スイッチがかかわっていて,これらはトリペプチドアンチコドンモデルでは説明できない。さらに,Trpのコドン(UGG)を認識するtRNA
Trpとの複合体をシミュレーションしたところ,観察される「止まりきらない」終止コドンが説明でき,またRF2によるコドンの3番目の塩基を読み取りが,根本的に異なっていることがはっきりする。これによって終止コドンに対する特異性が非常に高くなり,Trpコドンが明確に識別される。シミュレーションにより,タンパク質によるコドン読み取りが,tRNA擬態をはるかに超えた非常に多機能なものであることがはっきりと示された。Copyright Nature Publishing Group 2010