抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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C
4光合成は,生化学的にも,形態的にも,そして遺伝子発現制御の観点からも,独特である。C
4光合成経路は,葉肉細胞と維管束鞘細胞という二種類の特別な細胞の代謝活性が統合されたものである。まず,葉肉細胞で二酸化炭素がホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼによって固定され,炭素を4つ持つC
4化合物ができる。拡散によって維管束鞘細胞に入ったC
4化合物から,脱炭酸酵素の働きにより二酸化炭素が遊離され,カルビンベンソン回路に組み込まれる。C
4光合成では,維管束鞘細胞のRubiscoのある場所へと二酸化炭素が濃縮されるため,二酸化炭素飽和状態となり,Rubiscoはいつでも最大酵素活性を示すことができる。さらに,C
4光合成を行なう植物は,水や窒素も効率よく利用することが示唆されている。C
4光合成を司る遺伝子発現ネットワークがいかに進化してきたのかを理解することで,光合成産物に依存する収穫量の増加や,バイオ燃料の効率良い生成につながる有用な知見が得られると期待される。C
4光合成は,多型的な進化により獲得された形質であり,量的形質であると考えられる。一つの属に属する,C
4植物とC
3植物,またその中間型の光合成を行なう植物はC
4光合成の進化の道筋の研究に有用であると期待されるが,こうした植物では,ゲノム情報が不足していたり,順遺伝学/逆遺伝学の実験手法が確立されていなかったりする。次世代シーケンサー技術を用いたC
4光合成の量的形質遺伝子座のマッピングなど,新規技術による網羅的な比較解析が有効であるだろう。そして,C
4光合成に必須の組織の発生や代謝に関与する遺伝子がいくつか同定され始めた。C
4光合成を制御している転写制御ネットワークの解明が待たれる。