抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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2007年以降,原油価格が大きく変動する中で,原油価格の不安定化がもたらす諸問題についての関心が,消費者,産油国の双方において高まり,「適性価格」についての議論や,原油価格を一定のレンジ内でコントロールすべきとする「プライスバンド」に関する議論が聞かれるようになってきている。しかし,実際に産油国と消費国の双方が許容できるという意味での適性価格の水準や,プライスバンドの価格レンジを特定することは容易でなく,その実現には克服すべき多くの課題が存在している。市場参加者に対して適正な情報が発信され,それが共有されるということが原油市場の安定化に向けた施策の第一歩となる。市場に対する情報提供の施策としては,統計データの整備も挙げられる。正確な情報の不足は,憶測に基づいた偏った取引を誘因し,価格の不安定化に繋がる懸念がある。憶測による価格変動を避けるためにも,新興途上国における石油消費統計整備を進めていくことの重要性は大きい。価格安定化に向けた取り組みの1つとしては,産油国と消費国との対話をさらに深化させていくことも重要である。過去の産消対話自体が,実際の原油価格の安定化について市場で即時的かつ直接的な効果をもたらしたという実例はないが,お互いの情報交換や意思疎通を図ることを通して,不要な疑心暗鬼を解消するという意味でも重要である。原油価格の過渡の上昇や下落を回避するという観点では,需給双方の面でその時々の需給バランスに応じ柔軟に対応できる手段を有しておくことも重要である。消費国側の備蓄体制構築と併せて,産油国側での需給バッファーの構築も原油価格の安定化に向けては非常に重要な施策となる。商品価格を決定する上で,市場機能が果たす役割は,この上なく重要である。石油市場の安定化は,その市場において十分な流動性が確保され,かつその取引目的や取引形態などの面で多様なプレーヤーが確保されることを通して確保されると考えることができる。