抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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大気の熱構造と組成は,入射する太陽放射照度により基本的に決定される。紫外域波長の放射は,大気の分子を解離させ,連鎖的な化学反応,特に成層圏オゾンを生成する反応を引き起こし,また中層大気の主要な熱源となる。一方,可視域や近赤外域波長の放射は,主に下層大気や地表面に到達して暖めている。したがって,太陽放射のスペクトル組成は,大気の構造や地表面の気温を決定するうえで重要であり,太陽放射照度の変動に対する大気の応答は,スペクトルに依存することになる。2004年4月以降に太陽放射線・気象試験(SORCE)衛星の分光放射照度モニター(SIM)装置によって得られた0.2~2.4μmの間の太陽放射の日単位の測定結果から,太陽活動周期の衰退期に当たるこの時期に,我々のこれまでの理解に基づく予測よりも4~6倍も大きく紫外線が減少したことが明らかになった。この減少は,総太陽出力についてみると,可視域波長での放射の増加により部分的に相殺された。本論文では,このようなスペクトル変化が,2004年から2007年にかけての成層圏オゾン量の高度45km以下での大きな減少と,高度45km以上での増加につながったようにみえることを示す。我々の結果は,放射光化学モデルを用いてシミュレートしたものであり,Aura-MLS衛星によって同時期に行われたオゾン測定と一致するが,短期間なため,太陽の影響に起因すると明確に示すのは困難である。我々はまた,SIMデータを用いて,地表気候への放射強制力が太陽活動と同期しないことを示す。現在のところ,SIMにより観測されたスペクトル変動を確認する,あるいはほかの太陽活動周期を完全に特徴付けるのに十分な観測的証拠はないが,今回の発見は,大気圏全体の気温に対する太陽活動の影響が現在の予想に反している可能性を提起している。Copyright Nature Publishing Group 2010