抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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1980年代頃から,筆者が「東京農大式土壌診断システム」を構築して,多くの野菜生産地で土壌診断を行いながら,数多くの農家と交流を図ってきた。その時,土壌診断結果を見せて施肥改善を勧めても,聞く耳を持たず,「土づくり迷信」や「堆肥迷信」を信じる人が多かった。「土づくり迷信」とは次のようなものである。1)「肥やし」を施せば,施すほどよい作物がたくさん獲れる。2)「土づくり」の決め手は堆肥だ。3)野菜づくりには必ず石灰を施す。4)黒ボク土にはリン酸資材を必ず施す。「堆肥迷信」とは次のようなものである。1)堆肥は土づくり資材で肥やしではない。2)完熟堆肥は「土」と同じ,沢山施すほど土が良くなる。土壌診断をを頼まれると,殆どが土壌病害に悩まされており,必ずといってよいほど「メタボ土壌」になっていた。その結果は,1)可給態リン酸や交換性カリの大過剰,2)塩基バランスのくずれ,3)極端な酸性土壌であった。土壌には本来病原菌の生育を妨げる力が備わっており,この土の体力を「土力」と名付けた。地力は土壌が作物を育てる能力であり,地力が高まると土力は低下する。理想的な土作りとは,地力と土力が均衡する状態に土壌を保つことであり,可給態リン酸が50mg/100g付近と考えられる。土壌診断に基づいた施肥管理に切替えて成功した事例が紹介されている。家畜ふん堆肥のみで作物を栽培するのは,土壌養分の面から適切でない。それはリン酸やカリが蓄積し,土壌養分バランスを崩して,リン酸蓄積が土壌病害の発生を助長するし,カリ過剰は塩基の拮抗作用で,作物にマグネシウム欠乏をもたらす。窒素の肥効率が低い家畜ふん堆肥の連用を続けると,有機体窒素が蓄積して,長期間に亘って徐々に無機化し,硝酸態窒素に変化して,地下水汚染の原因になる。しかし,今後の肥料価格高騰を乗り切る切り札の一つが家畜ふん堆肥であることは間違いない。これも事例が紹介されている。新東京農大式土壌診断システムの分析フローが記載されている。