抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
陸上生態系は,炭素を光合成によって獲得し,主として二酸化炭素(CO
2)の形で失っている。地球規模の気候変動が予測される中で,上昇しつつある大気中CO
2濃度の緩衝装置として生物圏がどれだけ機能しうるのかは,現段階ではよくわかっていない。生物地球化学的理論では,土壌窒素の欠乏が高CO
2濃度に対する自然生態系の応答を制限し,管理されていない生態系における陸上植物生産力へのCO
2肥沃化効果を低下させると予測されている。最近のモデルにはそうした炭素と窒素の相互作用が組み込まれ,人為的な窒素源が今後のCO
2肥沃化効果の維持に役立つ可能性が示唆されている。しかし,投入された窒素が自然生態系のCO
2肥沃化に応答して植物の生産力を向上させることについては,まだ反論の余地なく実証されているわけではない。今回我々は,植物群集の構成がC
3植物であるスゲの類とC
4植物であるイネ科草本によって優占されていて環境変化に短期間で応答できる草本性の汽水湿地で,大気中CO
2濃度と土壌窒素利用可能量を操作した。複数年にわたる実験の1年目では,窒素の投入によって植物生産力のCO
2刺激が強化されたことがわかり,CO
2応答の窒素制限が示された。しかし,高CO
2濃度に対する応答がそれほど強くないC
4植物種の繁茂を,窒素投入が強く促進することもわかった。全体として,3年目と4年目までには,植物群集の構成にみられる変化が,植物生産力のCO
2刺激を最終的に抑制することがわかった。高CO
2濃度や窒素汚染のような地球規模の変動要因が植物種にさまざまな影響を及ぼし,植物群集に変化を強いている可能性が,詳細な研究によって示されているが,我々は,植物群集の変化が,高CO
2濃度に対する生態系全体の応答を変化させるフィードバック効果として働きうることを実証した。さらに,植物分類群がさまざまな変動に対して前向きに応答する能力のトレードオフが,地球規模の変動に対する自然生態系の応答を制約する可能性が示唆される。Copyright Nature Publishing Group 2010