抄録/ポイント:
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木質は陸上植物によって最も多く生産されるバイオマスであるため,木質形成に関わる転写制御の基礎を成す分子機構の精査は,植物学の根本的な問題であり,樹木のバイオテクノロジーにおいて重要な意味を持つ。これまでに木本植物において多くの転写因子が木質形成に関わることが示されており,その中にはリグニンの生合成に関わる転写因子も存在したが,木質の主要な3つの構成要素すべての生合成を制御する主要制御因子であることが証明された転写因子は存在しなかった。本研究では,ポプラ(Populus trichocarpa)の発達中の木質でよく発現しているNACドメイン転写因子群の1グループであるPtrWNDが同定された。PtrWND2BとPtrWND6Bは,多くのポプラの木質関連転写因子や木質生合成遺伝子のプロモーター活性を活性化した。また,シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のsnd1 nst1二重変異体でPtrWNDを発現させると,二次壁の繊維における異常が効果的に相補されたため,PtrWNDが二次壁の生合成プログラムを全面的に活性化する機能を持つことが示された。シロイヌナズナにおいてPtrWND2BとPtrWND6Bを過剰発現させると,二次壁に関わる転写因子と二次壁の生合成遺伝子の発現が誘導され,同時に異所的なセルロースやキシラン,リグニンの沈着が見られた。これらの結果により,PtrWNDがSND1のオーソログであることが証明され,ポプラにおいて,PtrWNDが下流の転写因子とともに木質形成の制御に関わる転写ネットワークを形成していることが示唆された。