抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
第二次世界大戦期まで行われていた軍事機密隠ぺいのための地図の改変(戦時改描)について,新潟県の西山油田の場合の実態を報告した。昭和初期の西山油田および南側の高町油田付近の地形図において,改描前には記載されていた油井は改描後では全て削除され,製油所は集落のように偽装されている。こうした改描は地理的にさほど不自然でないため,このような戦時改描版の旧版地形図を歴史地理学的資料・教材として利用する場合は,改描対象施設や地域に関する歴史的事実に十分注意する必要がある。一方,アメリカ陸軍地図局が1944年に発行した12500分の1の地形図においては,柏崎製油所や他の工場のほか,市役所や学校・寺社などが詳細に描かれている。日本の改描前地形図に表示されていない個々の施設情報をも記載するなど,米軍は日本の地形図以外の資料も参考にしてこの地形図を作製した可能性が高い。したがって戦時改描の軍事的効果は無かったに等しいことが判明した。日本国内の油田とそれに付随した製油所は,海外からの輸入原油を扱う太平洋岸の製油所に比べ,攻撃目標としての優先順位が戦略的に低かったため,柏崎製油所は結果的には爆撃されずに終戦を迎えた。一方,太平洋岸の主な製油所は米軍の爆撃により壊滅状態になった。