抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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部屋の照明とインテリアの色は,室内の雰囲気を決める大きな要素である。これまでにも,部屋の色光照明や内装色が空間の雰囲気に大きく影響することは,いくつかの研究で指摘されているが,これらは全体照明を対象とした研究であり,局部照明についての研究は十分に行われていない。しかし,アパート等でも簡単に設置できる局部照明を利用して,手軽に空間の雰囲気を変えることができれば,ワンルームの部屋等でも生活の豊かさが増すのではないかと考えられる。そこで,本研究では,局部照明を利用して,照明の色が人に及ぼす心理効果と空間に及ぼすイメージの関係について調べた。実験では,局部照明により赤,青,緑,シアン,マゼンタ,黄,白の7種類の色光で部屋の一部分(壁面)を照らし,各色光空間での心理評価を行った。評価方法には,色光による室内印象を表わす16対のことばを選定し,5段階尺度のSD法を用いた。その結果,くつろぎを求める時には黄・シアン・緑が有効で,気分の高揚には暖色の評価が高いことから,黄は適度な興奮状態を保ちつつくつろぎ効果が得られる色光と考えられる。シアンは沈静効果が高く,くつろぎながら気持ちを静めていくのにより効果的と思われる。また,シアンは3色のなかでもっともさわやかで清潔感のあるイメージをもつ。緑は黄よりも鎮静効果があり,シアンよりも暖かいイメージをもっている。緑は全体的に中庸な反応を示しているが,重厚さは3色のなかでもっとも強いことから,くつろぎのなかにも落ち着いた重厚なイメージを演出できると思われる。幻想的で個性的なイメージにはマゼンタ・青が効果的で,中でもマゼンタはもっとも幻想的な色と評価され,青よりも暖かみ,やわらかさをもった幻想的な空間をつくることができると思われる。青はマゼンタよりも沈静効果やさわやかなイメージがあり,幻想的な空間に上品さや清潔感をもたせることができるであろう。本研究により,色光を用いた局部照明が心理状態や空間イメージに影響を及ぼすことが明らかになった。賃貸のワンルームのように,1つの空間をリビング,寝室,仕事等の多目的に使用する場合,色光を用いた局部照明は,気分や目的,用途に応じて空間の雰囲気を手軽に変える手段として有効であると考えられる。
