抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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環境汚染の歴史を解明する「環境汚染のタイムカプセル」として,氷河・氷床の利用,樹木の内部に取り残された樹皮である「入皮」の利用について述べた。氷河や氷床のコアサンプルは環境汚染に関する貴重な情報を提供し,南極や北極の氷床,ヨーロッパアルプスの氷河のコアサンプルが分析されている。一般に樹木の外樹皮の表面には環境汚染物質が付着する。一方,入皮は死細胞で構成されているため,汚染物質は移動しない,外界から遮断されている,年輪による年代測定が可能であるという特徴を持ち,環境汚染のタイムカプセルとして最適である。樹木(スギ)の外樹皮から内側へ向かって窒素の含量を測定すると,外樹皮で窒素の含量が最も高く,内樹皮へ向かって含量が減少する。内樹皮で窒素の含量が増加するが,木質部で急激に減少する。外樹皮の窒素含量が大気由来の窒素であり,入皮の窒素含量を測定すれば,過去の窒素汚染の量を測定できる。日光杉で調べたところ,アルミニウム,マグネシウム,リンも同様な傾向を持つことが判明した。また林内雨に含まれる硝酸態窒素と環境汚染物質であるアンチモンの間には相関があり,入皮を利用することにより窒素だけでなく,アンチモンやスズの汚染状況を調査可能である。「入皮法」を利用した窒素汚染史の解明の研究は開始されたばかりであるが,今後研究を進めることにより,入皮法によるモニタリング手法が確立できると期待される。