抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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単子葉植物のモデルであるイネ(Oryza sativa)のPHO1遺伝子ファミリーを同定することによって,リン酸の恒常性について調べた。バイオインフォマティクスと系統解析により,イネのゲノムは3つのPHO1相同遺伝子を持ち,シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)において根からシュートへのリン酸の輸送に関わることが知られている2つの遺伝子AtPHO1とAtPHO1;H1とクラスターを形成することが示された。シロイヌナズナのPHO1遺伝子ファミリーとは異なり,イネの3つのPHO1遺伝子はすべて5′末端にcis天然アンチセンス転写産物が存在していた。鎖特異的な定量的逆転写PCR解析により,3つの遺伝子のすべてについて,組織発現レベルと栄養ストレスへの応答のどちらについても,センス転写産物とアンチセンス転写産物が異なった発現パターンを示した。根で最もよく発現していた遺伝子はセンス転写産物,アンチセンス転写産物どちらについてもOsPHO1;2であった。しかしながら,OsPHO1;2のセンス転写産物は様々な栄養欠乏条件下で比較的安定していたのに対して,アンチセンス転写産物は無機リン酸(Pi)の欠乏により強く誘導された。Ospho1;1とOspho1;2挿入変異体の特徴を調べた結果,Ospho1;2変異体のみが,Piの根からシュートへの輸送が大きく減少するというPiの恒常性に異常が見られ,シュートでのPiが少なく,根でのPiが多くなっていた。これらの結果から,OsPHO1;2がイネの根からシュートへのPiの輸送において重要な役割を果たしている因子として同定され,この遺伝子がcis天然アンチセンス転写産物により制御を受ける可能性が示された。さらに,単子葉植物および双子葉植物におけるPHO1相同遺伝子の系統解析により,双子葉植物において異なったクレードのPHO1遺伝子が出現し,この中にはPiの長距離輸送以外の役割をもつメンバーが含まれることが明らかとなった。