抄録/ポイント:
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胚発生過程での造血幹細胞(HSC)の発生にはいまだに盛んな議論が交わされており,特に,血管内皮細胞と系統関係があるかどうかについては意見が分かれている。長期のHSC能をもつ細胞が最初に同定された解剖学的な部位は,AGM(aorta-gonad-mesonephros)領域で,より正確には,背側大動脈底の周辺である。しかし,HSCが大動脈底から背側大動脈内腔に直接生じる可能性を示す証拠を提示するグループがある一方で,HSCは最初に大動脈底の下の間充織内に現れるという考えを支持するグループもある。本論文では,生きているゼブラフィッシュ胚の非侵襲的高解像度画像化によって,HSCが大動脈底から直接出現することを示す。その定型的な過程は,細胞分裂を伴わず,強力な屈曲によって,単一の内皮細胞が大動脈腹側壁から大動脈下の間隙に脱出し,それと同時に造血細胞に転換する。この過程は,背側-腹側だけではなく,吻側-尾側(中側-外側ではなく)の極性もあり,また,Runx1の発現に依存的である。したがって,Runx1欠損胚では,この脱出現象は,最初は同様であるものの,よりまれにしか起こらず,脱出細胞の急激な死により停止する。これらの結果は,大動脈底が造血系形成能をもち,またそこから大動脈下の間隙に,非対称的な細胞分裂によってではなく,新しいタイプの細胞の振る舞い(我々はこれを内皮造血移行とよぶ)によってHSCが出現することを示している。Copyright Nature Publishing Group 2010