抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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遺伝子産物レベル低下による効果を迅速に評価することができれば,興味深い遺伝子カスケードがどのように進むのかを明らかにすることができる。さらに,同じ遺伝子ファミリーに属する近い関係の遺伝子があると,たとえそれが単一遺伝子であっても,冗長的に働いて目的遺伝子の機能解明を妨げる可能性がある。本研究では,人工マイクロRNA(amiRNA)を一過的に発現させたシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の葉肉細胞プロトプラストを用いて,in vivoで迅速に遺伝子の機能を決定する方法が開発された。ルシフェラーゼを用いたレポーター系を利用して,概日時計活性を測定することでこの方法の最適化と検証が行なわれた。目的遺伝子のプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を結合したものと目的遺伝子特異的なamiRNAを共発現させたプロトプラストは,ルシフェラーゼによるルシフェリンの分解で生じる発光を追跡すると,6日以上もフリーランのリズムを維持できることが分かった。2種類の方法でデザインしたamiRNAプラスミドをそれぞれ用いて,既知の時計遺伝子を一過的にノックダウンすると,注目遺伝子の機能欠損変異体の表現型として既に報告されているのと同じ概日リズムの表現型が確認された。さらに,amiRNAを用いてカゼインサブユニットII β-サブユニット遺伝子ファミリーの発現をノックダウンすると,概日周期が延長され,カゼインサブユニットII β-サブユニットを過剰発現させると概日周期が短くなるという既存の報告と一致することが示された。以上のことから,「遺伝子のノックダウンによる表現型を調べるためには,まず形質転換植物を作出する」というこれまでのアプローチの時間のかかる過程が省け,遺伝子の機能をより迅速に解析できる非常に良い方法が確立されたといえる。この新しい方法は,内生の細胞での表現型観察が可能であるか,本研究で用いたルシフェラーゼによるレポーター系などのように観察可能な表現型を考案できるなら,植物研究の広範な分野で利用できる有用性の高い方法である。