抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
コムギ(Triticum aestivum L.)の生物季節的な発育を予測することは,適切な栽培管理や作付計画を策定する上で重要である。発育速度(DVR)の概念を用いて冬コムギの出穂期と成熟期を推定できるようにするため,短日植物の発育速度を計算するモデルを長日植物に適用した。発芽から出穂までの発育速度を日平均気温と日長の関数で表した。出穂から成熟までの発育速度は日平均気温のみの関数で表した。モデルの妥当性を検討するため,熊本県合志市の試験圃場において,2003年産と2004年産の冬コムギについて作期移動試験(各年12作期)を行った。秋播性の異なる3品種(チクゴイズミ,西海185号,イワイノダイチ)の発育データを取得し,品種によるパラメータの違いも同時に検討した。計算された発芽から出穂までの日数は,35~170日の広範囲に渡って実測値とよく一致しており,二乗平均平方根誤差(RMSE)は4.2~4.9日であった。出穂から成熟までの日数も同様に30~55日の範囲で実測値とよく一致し,RMSEは1.7~2.8日であった。品種による発育の違いは,主に温度反応に関するパラメータに反映された。発芽から出穂までは,発育速度が1/2となる時の温度が品種によって3~9°Cの範囲で大きく異なり,秋播性程度の低いチクゴイズミで高い温度,逆に秋播性程度の高い西海185号とイワイノダイチで低い温度を示した。また,出穂から成熟までは,温度に対する発育速度の勾配を表すパラメータが品種によって異なり,チクゴイズミで大きい値(急勾配),西海185号とイワイノダイチで低い値(緩勾配)を示した。モデルは冬コムギの発育予測に利用することができ,気候変動に対する冬コムギの生物季節的な反応の理解を助けることが期待される。(著者抄録)