抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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地球型惑星は,直径約1,000~5,000kmの巨大な惑星胚どうしの衝突を介して形成されたと考えられている。地球の場合,このような衝突の最後が火星と同規模の惑星胚との衝突で,これによって月が,太陽系誕生の5,000万年から1億5,000万年(50~150Myr)後に形成された。地球型惑星の成長のモデルシミュレーションは地球と金星の質量と力学的パラメーターを再現できるが,火星のサイズが小さいことを説明することはできない。1つの可能性は,火星が他の惑星胚との衝突や合体を免れた惑星胚であるというものだ。この考え方を検証するためには,火星の降着の時間スケールを知ることがきわめて重要であり,それはシャーゴッタイト-ナクライト-シャシナイト隕石における
182Hf-
182Wの崩壊系を用いて調べられる。それにもかかわらず,火星マントルのHf/W比に付随する大きな不確実性のため,この時間スケールはほとんど絞り込まれておらず,結果として0から15Myrの範囲の矛盾する時間スケールが報告されている。本論文では,火星が非常に急速に降着し,わずか1.8
+0.9-1.0Myrあるいはそれ以下で現在の大きさのおよそ半分に到達したこと,またこれは取り残された惑星胚起源という考え方と一致することを示す。我々は,コンドライトにおけるTh/Hf比と
176Hf/
177Hf比の間に,親天体形成過程の間のLuとThの再移動を反映する明確な相関を見いだした。この相関を用いると,火星マントルにおけるHf/W比は3.51±0.45であると推測される。この値は,2.6から5.0にわたるこれまでの推測値よりずっと正確であり,火星年齢の推測を従来難しくさせていた大きな不確実性を取り除いている。今回の結果はまた,コンドライトの親天体のような直径約100kmの微惑星がまだ形成されていた時期である星雲ガスの散逸前に,火星が成長したことを示している。火星の降着は早く起こったため,
26Alの崩壊によって駆動されたマグマオーシャンが形成されるのに十分だった。Copyright Nature Publishing Group 2011