抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本報では,生物多様性保全に少しは役立つ環境アセスメントの取組みを紹介した。環境アセスメントが生物多様性保全のためにすべきことを以下の3項目にまとめた。すなわち,1)対象地の生物多様性の現状を知ること。ここでは,生物標本作製による記録保存を推奨した(平成21年度に,新名神高速道路事業地域に生息する植物,約580種1400点を標本にして,大阪市立自然史博物館に寄贈,また,昆虫類も同様に寄贈したことを紹介した)。2)何を保全すべきかを見極めること。実態では,個々の種に対する保全対策が優先され,生態系保全対策に見るべき効果は少ないことを指摘した。ここでは,保全対象となる「生態系」を定義し,その認識を言及した。3)どうすれば保全できるかを考えること。ここでは,槙尾川ダム建設に伴う保全対策で対象になった3生態系のうち,「森林生態系」を例に,具体的保全対策を立てるうえで考えるべきことを示し,建設影響圏の森林の現状と鳥類の生息密度,簡易HEP(Habitat Evaluation Procedure)を紹介した。終わりに,現行の事業アセスでは,事業地域内の自然はほとんど保全できないと考えたほうがよく,標本として保存するほうがよほど気が利いていること,オンサイトでのミティゲーションを保障するために多様性保全のための用地取得についての道を開く必要があること及び生物多様性オフセットの可能性を探る必要性が高いことを述べた。