抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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我が国の主要な果菜であるトマトやナスは施設内で栽培されることが多く,その場合には風や訪花昆虫による受粉が期待できず,開花時に化学合成された植物ホルモン剤を処理して着果を促進して生産されている。しかし,近年,食の安全・安心に対する消費者の関心の高まりに伴い,化学合成農薬の使用を削減するための新たな技術開発の必要性に迫られている。同時に生産者の高齢化や担い手不足から農作業の省力化に対するニーズも高い。着果促進のために,施設栽培ではこれまで植物ホルモン剤が使用されてきたが,近年花粉媒介昆虫による受粉が注目されている。我が国の冬春期の促成栽培トマトでは,北ヨーロッパ原産のセイヨウオオマルハナバチBombus terrestris Linnaeusが導入され利用されている。しかし,寒地系の花粉媒介昆虫である本種を栽培期間の大半が高温期に当たる夏秋期のトマトやナス栽培で,そのまま利用することは困難であった。そこで,巣箱を地下に埋設することで巣箱内の温度を低下させる地下埋設法を考案し,高温期にセイヨウオオマルハナバチのコロニーを長期間維持することで,夏秋期の雨除け栽培トマトおよび半促成栽培ナスへの利用に道を開いた。さらに,高温期に稔性花粉量が減少するトマトでは,花粉生成量に及ぼす施設内温度の影響を解析し,夏期にセイヨウオオマルハナバチを利用できる時期や地域を判別できる回帰式を考案した。ところが,導入された施設から逃亡し,野生化したセイヨウオオマルハナバチの生態系に及ぼす悪影響を懸念し,2006年から「特定外来生物」として飼養が規制された。そこで,本種に代わる花粉媒介昆虫として,明治初期に導入された後ほとんど土着化がみられないセイヨウミツバチApis mellifera Linneと熱帯原産で我が国本土で越冬できず土着化が困難と考えられるキオビオオハリナシバチMelipona quadrifasciata Lepeletierの利用を検討した。セイヨウオオマルハナバチのような振動採粉ができないセイヨウミツバチの授粉能力は低く,作型に係わらずトマトでは利用困難であった。ナスでは低温期に稔性花粉量が減少するとセイヨウミツバチによる受粉効果が低下し,形状不良果が増加したが,稔性花粉量の十分な時期の施設ナスでは利用できた。...(著者抄録)