抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
本論文では,複雑系科学における統計的推論と,幾何学とのかかわりについて簡単に述べた。地震の発生頻度や株価変動の分布など,複雑系科学に現れる確率分布には,確率の減衰が遅いものが多くあり,このような確率分布では,確率変数の平均や分散が定義できないことがある。そもそも,平均や分散という概念は,従来の指数型の確率分布に則した表現であり,冪分布をはじめとする非指数型の分布の表現には適さないことがある。冪型分布やq-正規分布によって記述される現象は,例えば宇宙の大規模構造や株価の変動のように,個々の事象が独立に活動することができず,それぞれの結果が他の事象に何らかの相関を与えるようなものであると考えられる.このような現象では標本空間がユークリッド空間ではなく,ベクトル空間や多様体のように,ある種の数学的構造が内在していると思われる.そして,平均や分散などの概念は,それ自体が標本空間の座標系の取り方に依存する概念であるので,現象に応じた適切な確率分布の表現が必要になると考えられる。そこで本論文では,初めに統計モデルの幾何学について簡単に解説する。そして,それに基づいて,微分幾何学を用いた非指数型分布の表現法や,確率変数の独立性の概念を修正したq-指数型分布族の統計的推論の手法などについて解説する。