抄録/ポイント:
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現生脊椎動物約58,000種のうち99%以上は顎を持っている。この大きな分岐群を構成する動物は顎口類と総称され,4億4,400万~4億1,600万年前のシルル紀には出現していたことが確認されている。デボン紀末(3億5,900万年前)までには,現在の(顎口類クラウン群の)放散の起源と,おそらく陸地への進出が起こった。こうした事象と一致するように動物相にも大きな変化が生じた。それは,顎を持たない魚類(無顎類)が優占するシルル紀の生態系から,ほとんど顎口類のみからなる新しい動物群集への移行で,その結果は現在もなお明らかである。この流れは,最古の有顎脊椎動物の栄養的放散および生態的優位性に関するいくつかの定性的記述をもたらした。本論文では,初期顎口類の下顎要素の機能的変化に関する定量的分析について示し,この重要な期間の進化パターンに関する理解を絞り込む枠組みを提供する。我々は,シルル紀に機能的相異の最初の増大が起こり,それがデボン紀の最初期までに安定化した後,脊椎動物の栄養的放散と関係するエムシアン期(約4億年前)の酸素化事象が発生したことを示す。デボン紀に生じたその後の分類学的多様化では,機能的多様性が増大することはなく,新しい分類群は確立された下顎構造に立ち返って精緻化した。デボン紀の機能的空間は肉鰭類と「板皮類」に優占され,後者に見られる幅広い多様性は,顎を持つ顎口類ステム群に大きな栄養的革新があったことを意味している。対照的に,現生脊椎動物の主要分類群である条鰭類魚類と四肢類は,下顎の形態が驚くほど保守的で,機能の多様化や革新を示すものはほとんど認められない。デボン紀の顎口類は,「甲皮類」と呼ばれる無顎魚類に対して分類学的に優占するようになる前に,下顎の機能的多様性をさらに増すのを止めてしまっており,このことから,脊椎動物の生物多様性に生じたこの重要な変化に関する古典的な適応仮説に新たな視点がもたらされる。Copyright Nature Publishing Group 2011